ミャンマー学習帳

もうすぐミャンマーにお引越しするので、かの国の気になるところをちまちまとお勉強中。

ジョージ・オーウェル「絞首刑」

こないだ英Guardian紙が、こんなリーディングリストを出していました。

http://www.guardian.co.uk/books/2013/may/08/rory-maclean-top-10-books-burma?INTCMP=SRCH

「ビルマについての必読書Top10」、トラベルライターのRory MacLeanさんのセレクトだそう。

どれどれ、と見てみたところ、一冊目に載っているのがジョージ・オーウェルGeorge Orwell)の「絞首刑(A Hanging)」。

動物農場 (角川文庫)

↑ 短編なので、大体他の著作とまとめられて出版されている模様。これとか。

おぉ…タイトルからして何かすごいハードなのから来たね……。

おすすめの理由を見てみると、

「トップバッターは20世紀の傑作寓話二作を残したオーウェルで決まり。5年に渡るビルマ生活が、抑圧された者たちの苦しみに彼を同調させたんだから、もう尚更。『ビルマの日々(Burmese Days)』っていう作品もあるけど、短編『絞首刑』の方がより感動的かな。絞首台に向けて歩く途中で水たまりをよける死刑囚を彼が見ている、っていう作品なんだけどね…。そのほんの一瞬のところで、オーウェルは人命の尊さと権力の冷酷さとを際立たせるわけ」

とのこと。

へぇ、1984で有名なオーウェルさん、ビルマに住んでたのですね。

ちらりと彼の略歴を見たところ、ベンガル生まれのイングランド育ち、イートン校卒業後に警察官としてビルマに駐在(1922-27年)。
帝国主義がすっかり厭になって退職、その後はパリやロンドンを放浪したり、スペイン内戦に参加したり、BBCで働いてみたりなんだりしつつ文筆活動を行っていた、てな感じの方のようです。動物農場や1984は亡くなる直前の作品だとか。

うーんイギリス人的にはこれがぐっとくるセレクションなんだろうか…我が国文豪の原体験、的な側面から来るとは(Roryさんカナダ人らしいけど)…なんて思いつつ、iBooksで英語版をタダで入手できたので(無料サンプルの中に全文含まれてた。そんなんでいいのかねAppleさん)、取り敢えず読んでみました。

まあ解説そのままのお話でした。
舞台はビルマ某所の刑務所。
罪状不明なるも死刑囚となってしまったヒンドゥー教徒の小さな弱々しい男を、現地人とヨーロッパ人の混成部隊で朝っぱらから絞首刑に処す、その一部始終。
主人公(オーウェル)は水たまりのところで、自分たちのやっていることの言葉にできないほどの正しくなさにハッとするものの、もちろん執行を止めることなどなく、仕事が終わった後は一種異様なテンションで他の職員と談笑、という何ともリアルな展開。

ちょっと面白いのは、刑務所職員たちの人種構成。
ドラヴィダ人(=南インド~北スリランカあたりにお住まいの種族。ところでなぜかこの人の英語は、sがたびたびssになっている。彼らがそんな訛り方なのか、この小役人限定なのか)、ユーラシア人(=ヨーロッパ人とアジア人の混血の人の総称)、さらにはビルマ人も登場。
死刑囚もヒンドゥー教徒だし、予想以上にインド帝国の一部になっている感じが強いのでした。
ビルマが完全にインド帝国の一部となったのは1886年。
それから30数年後の状況を描いていると考えると…これは役人たちの構成に限った話なのか、街中もそんな感じになっていたのか…興味深いところ。
イギリスのインド支配の歴史とその今に至るまでのインパクト、というのは地味に関心のあるテーマだったのですが、ちょっときちんと追ってみたいものです。

風景描写は砂利が黄色い(yellow gravel)ことくらい。ふーん。。。

そんなこんな、なかなか面白いし印象的ではあったのですが。。。いきなり何かコアなところから攻めてる気がしてならないので、取り敢えずこのリーディングリストは放っておいて、明日は今更ながらThe Ladyでも観ようかと思います。