ミャンマー学習帳

もうすぐミャンマーにお引越しするので、かの国の気になるところをちまちまとお勉強中。

ミャンマー? ビルマ? の今

ミャンマーと言えば、必ず付きまとう地名の呼称問題。
こんな場末の学習ブログ一つ作るにも、ミャンマーと呼ぶべきかビルマと呼ぶべきか、はたまたいちいち両方併記するのがよいか、なんて迷ってしまう、非常に政治色の強いお話です。

この国の現在の英語での正式名称は、Republic of the Union of Myanmar。日本語での正式名称はその直訳であるミャンマー連邦共和国、とされています。
しかし今でもこの国を頑なにビルマ(Burma)と呼び続ける層が確実に存在します。

事の発端は1989年、軍事政権がビルマからミャンマーに英語での国名を変更したところに遡ります。
ビルマという英語呼称は、イギリスがこの地域に絡んできた19世紀半ばから使われてきたそうですが、植民地時代の負の遺産を排除すべし、ということで変更されたのだそう。
(同じ理由でこの時、他の地名もざくざく変わっています。旧首都ラングーンヤンゴンに、近年仏教徒とイスラム教徒の衝突激化で話題になることの多いアラカンはヤカインになるなど。イラワジ川→エーヤワディー川への変更も多分このタイミング?)

また、ビルマという名前はビルマ(バマー)族(ミャンマー人全体の7割を占める)を指すので、他の民族の手前よろしくない、という理由付けもされたようです。
どうやらこれはこじつけ(?)で、ミャンマーという語もビルマ族を指すらしいのですが。

そうした理由の是非はさておくとしても、そもそも手続き的な話として、
正統性なく国を支配している軍事独裁政権が勝手に国名変えちゃうとかありえない! 国民を無視して新しい国を作ってしまおうとしていることの象徴だ! とアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)をはじめとする野党や民主化活動家等は猛反発。
これを支持する欧米諸国等も含め、「ビルマ」を使い続ける層がかなり存在するまま、四半世紀が経過した…という具合なのでした。

が、民政移管で風向きががらっと変わってきた昨今。
昨年11月にこの国を訪問したオバマ米大統領は、テイン・セイン大統領との会談では「ミャンマー」、アウンサンスーチー氏との会談では「ビルマ」を使い、話題になりました。

そんな今、国際社会はこの国をどう呼んでいるのか。
てきとーにちらちらと見た感じ、公式には、

ビルマ派

ミャンマー

  • 国連
  • 日本政府
  • ドイツ政府
  • オーストラリア政府
  • 中国政府
  • 韓国政府
  • 日本のマスメディア
  • New York Times
  • AP通信
  • CNN
  • Financial Times
  • The Economist:この雑誌が出している"Style Guide"という英語の書き方マニュアルには、「国家が新名称(あるいは旧称)で呼ばれたいという意思をはっきり示している場合には、その意思を尊重する」との方針が。ただ、分かりやすさを重視してか、実際の記事では初出時に旧称を併記していることも多い。
  • アムネスティ・インターナショナル(人権団体)

併用?

  • フランス政府:仏外務省の英語サイトではミャンマー。ただしそこに載っているプレスリリース等のタイトルは併記が多く、しかも本文中では大概ビルマ呼び。仏外務省の仏語サイトや、ヤンゴンの仏大使館のサイトでは完全にビルマ(Birmanie)呼びっぽい。(あ、そもそも「ミャンマー」に対応するフランス語ってあるのかしら…Google翻訳に聞いたらそのままMyanmarって出てきましたが…)

という具合のようです。

うーん、現状を眺めただけではさっぱり分かりませんが、アメリカも公式にはそのままビルマ呼びを続けているし、ここ2年ほどの民主化に伴いturn the tide...なんていう雰囲気はなさげ、なのですかね。
上記のBBCのブログにはAP通信が2006年に方針変更した旨紹介されているので、多分1989年からそれぞれ諸々逡巡あって現状があるのでしょうが。

ま、そのあたりの細かいことはおいおいまた見ていくとして、本ブログは(タイトルにもあるとおり)ミャンマー呼びで通したいと思います。
理由は…BBC方式ということにでもしておきましょう。